中途半端な更新

4話


目が覚めると、そこは白一色の世界だった。


右を見ても左を見ても何処を見ても、白一色で何も無い、何の気配も感じない。


しかも、前へ歩くことすら出来ない。地に立ってるような感触がなく、体から宙に浮いているかような不自然さが感じられる。


さて・・・・・・どうしようか・・・・・・。

こんなによく分からない事態だというのに、自分はやけに冷静だ。この数日で既に驚きすぎていて、自分はもう何が起こっても驚かないのかもしれない。

どうすればいいか・・・・・・とりあえず腕を動かしてみる。右手の平を握りこみ、拳を作ってみる。そして、前方に向けてパンチ。

すると、何も無いはずの空間なのに、何故か固いものを殴ったような痛みが拳に伝わった。ひょっとすると透明な物がそこにはあって、それを殴ったのかもしれない、と思い、目を凝らして殴った部分を見てみる。

そこは、いやその空間は、まるでひび割れた硝子のような亀裂が入っていて、見るからにもう何回か衝撃を与えれば、砕けてしまいそうな危うさがあった。

―――これは、やるしかないな。

感覚的に理解し、今度は右足に力を込める。地に足が付いてないため軸足による安定感には頼れないが、「破壊力ならこっちだろう」との自分の判断だ。


息を吸って・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・息を吐いた。


「うらぁ!!」

テレビで見た見よう見まねの物でしかないが、自分の中では忠実に再現された。強力なハイキックがひび割れた空間に蹴りこまれる。蹴りは吸い込まれるようにひびに向かって命中。音は無く、無音のままその空間は砕け散った。

「な・・・・・・!」

空間に出来た穴。そこから何かが見える。

見えるものは、自分のよく知っている物だった。

自分の身長より、いささか大きいサイズの木製ベット。その上には無造作に置かれた漫画や小説。部屋の隅には小さな頃から使っていた机。壁には最近バイト先から貰った海の景色の写真が張ったカレンダーが掛かっている。時期は7月を示していた。

――俺の部屋だ・・・・・・間違いなく。

 「ど・・・・・どうなってるんだ・・・・・・。」

なんで俺の部屋がこんな所から見えるのか、その意味が分からない。

ただ、いつもと違い。なにかしら違うものを部屋の中から感じる。見た目や空気は全く同じでも、何かが違うと断言できる。何とは説明できないが・・・・・・。

とにかく、中をしっかり見てみないと分からない。そう思い部屋の中へ足を踏み入れようとしたその時。

―――声が耳に響く。
 
「あなたの世界はこちらでは無い。今はあちらなのですよ・・・・・・。」

背筋が震えた。

 まるでささやくような声だ。明らかに自分へと向けられているのが分かる。
 
 俺は後ろへと振り返った。そこに見えるのは何も無い。ただの空間――のはずだったが違う。そこに見えるのは光が自分の足元から伸びて、自分が進むべき道を表していた。

気がつけば宙に浮くような不安定さは消えている。光の足場が出来たからだろう。

光の道の先には扉が見える。まるで城の扉かと思わせるような、豪華に輝く黄金の扉だ。


しかし、光の道を踏み出すことは出来なかった。

視界がぐらつく。 景色が霞む・・・・・・。

薄れる意識の中で、ささやくような声が聞こえた。

「強くなりなさい。ここを歩くのは光を持った人間だけなのです。」

なんなんだよ・・・・・・俺はまだ・・・・・・・・・。

「アナタがこの道を通ること、それは記憶を取り戻すこと。
 アナタがあの世界に存在すること、それは力を手に入れること。
 アナタがここを訪問し干渉すること、それは世界へ帰るということ。」

「今は返りなさい・・・・・・また会いましょう」






目を開いた。

暗い部屋の中、黒く煤けた天井が見える。

・・・・・どうやら、夢だったらしい。

おかしな夢を見たなぁと体を起こし、ベットに座ったままの状態で辺りを見回す。この部屋の印象は辛気臭い。まるで土を固めて作ったかのような壁に、左側には小さな窓。光を灯した小さなランプが4つ掛かっており、大きなクローゼットが壁側に設置してある。
部屋の中心には丸型のテーブルがあり、その上には2つのカップが置いてある。一つは飲みかけようで、半分程中身が残ったままになっていた。

寝ぼけた目をこすって立ち上がり、窓をあけた。

着替え終わるとカーテンを開き窓を開けた。光が部屋の中に入り、辛気臭い部屋に若干の暖かさと、新鮮な風が部屋に入ってくる。

 
朝日が部屋に入ったからか、頭は徐々に覚醒してくる。